【次世代経営者講座 第9回】自分を知る

経営の軸は、外から借りるものではなく、自分の内側から見つけるものです
顧問先企業にて継続して実施している次世代経営者講座も、第9回を迎えました。
今回のテーマは、自分を知ることです。
経営者は日々、判断の連続の中にいます。
何をやるか。
何をやらないか。
誰と組むか。
どこに投資するか。
どの方向に会社を進めるか。
こうした判断の質を決めるのは、知識や経験だけではありません。
最後に拠り所になるのは、その人自身の哲学です。
松下幸之助氏や稲盛和夫氏のように、長く結果を出し続ける経営者には、必ず一本の軸があります。
ですが、その軸は、他人の言葉を借りただけでは身につきません。
自分自身の価値観が見えていない状態で他人の哲学を取り入れても、かえって迷いが増えることがあります。
だからこそ今回は、経営哲学を学ぶ前提として、まず自分自身を知ることに集中しました。
自分の価値観が見えていないと、判断はぶれ続けます
経営者が迷うとき、その背景には情報不足だけでなく、自分の価値観が整理されていないことがあります。
本当は何を大事にしたいのか。
何を守りたいのか。
何に腹が立ち、何に喜びを感じるのか。
何のために商売をしているのか。
こうした根っこの部分が曖昧なままだと、判断はその場の感情や外部の空気に引っ張られやすくなります。
周りがやっているから。
流行っているから。
誰かに勧められたから。
こうした理由で動き続けると、いずれ自分の経営が分からなくなります。
私は、経営における迷いの多くは、能力不足というより、自分の基準が言語化されていないことから生まれると考えています。
だから、自分を知ることは自己分析で終わる話ではありません。
経営判断の精度を高めるための、極めて実務的な土台づくりです。
価値観は、頭の中にあるだけでは使えません
今回の講座では、独自に開発した価値観マップとAI分析を組み合わせながら、経営者ご自身の価値観を見える化し、言語化するワークに取り組んでいただきました。
価値観という言葉はよく使われますが、多くの場合、何となく分かった気になっているだけで終わっています。
ですが、本当に重要なのは、頭の中にある感覚を言葉にできることです。
自分は何を大切にしているのか。
なぜそれを大切にしているのか。
その価値観は、これまでの経験のどこから来ているのか。
それを言語化できるようになると、判断に一貫性が生まれます。
逆に、言葉にできない価値観は、いざという時に使えません。
自分の中にはあるのに、判断の場面で取り出せない。
これでは軸として機能しません。
だから今回の講座では、考えるだけでなく、見える形にし、言葉として定着させるところまで重視しました。
AIは、答えを出すためではなく、自分を映す鏡として使う
今回のワークでは、AI分析も活用しました。
ただし、AIに答えを出してもらうためではありません。
目的は、自分でも気づいていなかった傾向や言葉の癖を映し出し、自分を客観視するためです。
私は、AIは自分を映す鏡のようなものだと考えています。
入力したものが浅ければ、返ってくるものも浅い。
逆に、自分の経験や考えを丁寧に掘り下げていけば、思いがけない形で輪郭が見えてくることがあります。
今回も、価値観マップとAI分析を組み合わせることで、単なる思いつきではない、自分の中に一貫して流れている考え方が見えやすくなりました。
感覚のままでは曖昧だったものが、言葉になることで、初めて使える軸に変わっていきます。
自分で言語化すると、腹落ちする強さが変わります
参加者からは、
自分で改めて言語化すると納得する
ぼんやり思っていたことが、ようやく言葉になった
といった声がありました。
これは非常に大きな変化です。
なぜなら、人は人から言われた正解よりも、自分の中から出てきた言葉の方を信じられるからです。
経営者は孤独です。
最終的に判断するのは自分であり、責任を取るのも自分です。
だからこそ、外から与えられた答えではなく、自分の中で腹落ちした言葉を持っていることが重要になります。
私は、経営者に必要なのは、立派な言葉を知ることではなく、自分の言葉で語れることだと考えています。
その意味で今回の講座は、知識を入れる回ではなく、自分の土台を掘り起こす回になりました。
哲学は、自分を知った先にしか育ちません
今回のテーマは 自分を知る でしたが、これは単発で終わる話ではありません。
むしろ、ここからが始まりです。
次回以降は、この価値観を土台にして、経営者としての哲学を学ぶステップに進みます。
ですが、その哲学も、自分の価値観と結びついていなければ、ただの知識で終わります。
私は、哲学とは立派なことを言うためのものではなく、判断に一貫性を持たせるためのものだと思っています。
苦しい時でもぶれない。
人に合わせすぎない。
目先の損得だけで動かない。
そうした強さは、自分が何者で、何を大切にしているかを知っている人にしか育ちません。
だから、自分を知ることは甘い自己理解ではありません。
長く続く経営のための、最初の条件です。
永く続く企業は、まず経営者が自分を知っている
会社の未来は、経営者の判断で決まります。
そしてその判断は、経営者自身の価値観と哲学から生まれます。
つまり、経営者が自分を知らないままでは、会社もまた安定しにくいということです。
事業承継の場面でも、二代目 三代目の経営者が本当に苦しむのは、正解が分からないことより、自分としてどうしたいかが曖昧なことです。
先代のやり方を守るのか。
変えるのか。
広げるのか。
絞るのか。
この判断の軸は、自分の価値観が見えていなければ持てません。
今回の講座を通じて、永く続く企業をつくる第一歩は、経営者が自分を知ることにある。
その確信を、参加者の皆さまと共有できた時間になりました。
今回もまた、小手先のノウハウではなく、経営の土台を整えるための大切な回となりました。






