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新卒正社員は本当に必要か。採用の前に見直すべき粗利益と生産性

人手不足だ。
若い人がいない。
だから新卒を採らないといけない。

こう考える経営者は多いと思います。
ですが、私はその前提自体を疑った方がいいと考えています。

そもそも、社員自体が本当に必要なのでしょうか。
新卒正社員でなければならない理由は、どこにあるのでしょうか。
中途ではなぜだめなのか。
業務委託や外注ではなぜだめなのか。
短時間人材ではだめなのか。
そして何より、お客様は本当にそれを望んでいるのでしょうか。

多くの会社で起きているのは、人が足りないから採用する、という短絡です。
しかし本来の経営とは、もっと少ない人数で回すにはどうするかを、現場レベルで改善し続ける営みです。

採用は、まず考えることではありません。
最後に検討することです。

1. なぜ経営者は新卒採用に流れやすいのか

にもかかわらず、なぜ経営者は新卒採用に流れるのか。
私は、次の3つが大きいと思っています。

・思考停止
・前例踏襲
・なんとなく

昔からそうしてきた。
周りもそうしている。
人手不足と言われているから、うちも採らないとまずい気がする。
その程度の理由で、大きな固定費を背負おうとしている会社は少なくありません。

ですが、採用は軽い話ではありません。
特に中小企業にとっては、かなり重い経営判断です。
人が足りないという不安だけで決めてよい話ではありません。

2. 新卒正社員1人の採用は、想像以上に重い投資です

中小企業にとって、新卒社員を1人抱えることは大きな投資です。
月収の手取りだけを見てはいけません。

実際には、

・社会保険料
・採用コスト
・教育コスト
・管理コスト
・離職リスク
・現場の時間コスト

まで含めて見なければいけません。

感覚的には、本人の月収手取りの20か月分くらいのコストとして見るくらいで、ちょうどよいと思っています。
中小企業にとっては、それだけで数年分の重い負担になり得ます。

にもかかわらず、

・悲観的に見積もった粗利益ベースの損益分岐点を計算していない
・利益が最大化するのが何年後か分からない
・その利益がその後何年続くかも見ていない

この状態で採用に走る会社は少なくありません。
これはかなり危ういと思います。

3. 採用の前に、まず粗利益で考えるべきです

私は、採用を考える前に、まず粗利益で考えろと言いたいのです。
売上ではありません。
粗利益です。

その人を採ることで、粗利益はどう増えるのか。
教育期間中の赤字は、いつ回収できるのか。
戦力化したあと、どれだけ利益を積み上げてくれるのか。

しかも、その見積もりは楽観ではなく悲観で置くべきです。
経営は、思ったよりうまくいかないことの方が多いからです。

採用の判断とは、気合いや期待で決めるものではありません。
利益の構造で決めるものです。

① 売上ではなく粗利益を見る理由

売上が増えても、粗利益が増えなければ意味がありません。
人を増やして忙しくなっただけ。
現場が回らなくなっただけ。
利益は増えていない。
これでは経営として失敗です。

採用は、人数を増やす行為ではありません。
粗利益を増やすための投資です。
そこを取り違えると、採用そのものが経営を圧迫します。

② 損益分岐点を曖昧にしたまま採るのは危険です

いつ黒字化するのか。
どれだけ働けば回収できるのか。
何年残れば投資回収できるのか。
このあたりが曖昧なままの採用は、願望です。

採用の成否は、採った後に決まるのではありません。
採る前の設計で、かなり決まっています。

4. 生産性を見ずに採用するのは危険です

さらに見るべきは、生産性です。
私ならまず、次の3つを見ます。

・利益の計算
・生産性の計算
・時間あたり生産性の計算

特に、時間あたり生産性は重要です。
目安としては、

粗利益 ÷ 役員を含む総従業員の時間数累計

で見ます。

この数字が見えていないのに採用するのは危険です。
特に、1時間あたり生産性が4,000円を切っている状態であれば、まず採用はしてはならない。
先にやるべきは、収益構造の見直しです。

人を入れれば解決するのではありません。
生産性が低いまま人を増やすと、低収益構造がそのまま拡大します。
苦しい会社が、もっと苦しくなるだけです。

5. 採用の前にやるべきは、利益構造の見直しです

では、収益構造の見直しとは何か。
まずやるべきは、売上と粗利益によるABC分析です。

・自社の売上トップ3は何か
・粗利益トップ3は何か

これをまず把握することです。

すると、儲かっている仕事と、忙しいわりに儲かっていない仕事が見えてきます。
ここが見えていない会社ほど、人を増やそうとします。
ですが、本来先にやるべきは、仕事の整理です。

① Aを伸ばし、BとCを決める

次にやるべきは、BとCをどうするかの判断です。

・縮小するのか
・Aに引き上げるのか
・やめるのか

ここを決める。
決めたら実行する。
本来、採用より先にやるべきなのはこちらです。

仕事を減らす。
顧客を選ぶ。
単価を見直す。
商品設計を変える。
これをやらずに人を増やしても、低収益の仕事が増えるだけです。

② 少ない人数で回る仕組みを作るのが先です

経営者がやるべきことは、人数を増やすことではありません。
少ない人数で利益が出る仕組みを作ることです。

この努力を飛ばして、採用で埋めようとするから苦しくなる。
採用は魔法ではありません。
むしろ、収益構造が弱い会社にとっては、経営を重くする原因になります。

6. 新卒採用が怖いのは、給料以外の負担が大きいからです

新卒正社員の採用が怖いのは、単に給料がかかるからではありません。

・教育負担がある
・早期離職がある
・採用コストがかかる
・戦力化まで時間がかかる

ここまでは多くの会社が理解しています。
しかし、さらに厄介なのは、既存社員への悪影響です。

① 新卒1人のために、既存社員の時間が削られます

新卒一人を育てるために、既存社員の時間が削られる。
現場の負担が増える。
教える側の生産性が落ちる。
管理職の負担も増える。
結果として、現場全体が疲弊します。

採用とは、採った一人だけの問題ではありません。
組織全体への波及まで見なければいけないのです。

② 最悪なのは、既存社員の離職です

さらに悪いケースでは、新卒を採った結果、ベテランや中堅が疲弊して辞めます。
これは最悪です。

新卒一人を採った。
その結果、既存社員一人を失った。
これでは、利益構造も現場力も悪化します。

採用は、足し算の話ではありません。
既存戦力への影響まで含めた全体最適の話です。

7. 人は財産です。ただし、財産になるかは経営者次第です

もちろん、人がすべて悪いと言いたいわけではありません。
人は財産です。

利益の出る人であり、長くいてくれればいるほど、会社に利益をもたらしてくれる人であれば、それは間違いなく財産です。

ですが反対に、

・いるほどお金が出ていく
・育たない
・利益を生まない
・周囲に悪影響を与える

そうなれば、それは負債です。

財産にするか、負債にするかは、結局経営者次第です。
採ること自体に意味があるのではありません。
利益を生む形に設計できるかどうかがすべてです。

8. 採用の前に、経営者が自分に問うべきこと

だからこそ、採用の前に考えてほしいのです。

今やろうとしている採用は、お客様にとって最善なのか。
その人を入れることで、お客様はもっと幸せになるのか。
必要なのは本当に人なのか。
それとも、

・商品設計の見直しなのか
・単価の見直しなのか
・仕事のやめ方なのか
・顧客の選び方なのか

本当の問題は、別のところにあるのではないか。
ここを考えるべきです。

新卒正社員を採ること自体が悪いのではありません。
ですが、それが思考停止で選ばれているなら危ない。
本当に必要かを考えず、前例だけで決めているなら危ない。
数字も見ず、利益構造も見ず、何となく人を増やすなら、それは経営ではなく願望です。

9. まとめ

新卒正社員ありきで考える前に、まず自社の粗利益と生産性を見直すべきです。

・その人を採ることで粗利益はどう増えるのか
・教育コストはいつ回収できるのか
・時間あたり生産性は十分か
・ABC分析で、本当に残すべき仕事は何か
・今の人数で回す工夫はやり切ったのか

これらを見ないまま採用に走るのは危険です。

人は財産です。
しかし、財産になるかどうかは、採る前の経営判断でほぼ決まります。
だから私は、新卒正社員ありきで考える前に、まず自社の粗利益と生産性を見直せ、と言いたいのです。

10. 採用で埋める前に、利益構造を見直したい経営者の方へ

人が足りない。
だから採う。
この発想は、一見もっともらしく見えます。
ですが、実際には 利益が出にくい構造を人で埋めようとしている だけのことも少なくありません。

採用の前に見るべきは、求人票ではなく数字です。
自社は何で儲かっていて、何で疲弊しているのか。
そこを整理できるだけでも、採るべきか、採らないべきかの判断はかなり変わります。

福島県郡山市で、税理士のセカンドオピニオンを中心に活動。 国税18年、税理士8年の経験をもとに、経営の損失を防ぐため、お金、人材、時間、機会、家族、未来の6つから企業を支援。

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