【次世代経営者講座 第10回】ストレスの正体と対処法

経営者は、知らないうちに自分を追い込みやすい立場です
顧問先企業にて継続して実施している次世代経営者講座も、第10回を迎えました。
今回のテーマは、ストレスの正体と対処法です。
経営者の日常は、判断と責任の連続です。
何を決めるか。
誰に任せるか。
どこで踏みとどまるか。
どこで動くか。
こうした意思決定を、日々一人で積み重ねています。
その結果、夜眠れない、気持ちが休まらない、常に頭が張っている。
そうした状態に陥る経営者は少なくありません。
ですが、多くの方はそれを 自分が弱いから とか 気合いが足りないから と捉えてしまいがちです。
私は、そこに大きな誤解があると考えています。
ストレスは精神論だけで片づけるものではありません。
まず必要なのは、体の中で何が起きているのかを理解することです。
今回の講座では、その理解から始めました。
ストレスは気合いの問題ではなく、体の反応です
ストレスという言葉は日常的に使われますが、その正体を具体的に理解している方は意外と多くありません。
何となくつらい。
何となく苦しい。
何となく焦る。
そうした感覚のまま放置していると、自分の状態を正しく扱えなくなります。
今回の講座では、ストレスを 敵 として雑に扱うのではなく、体の中でどういう反応が起きているのかを整理しました。
感情だけで捉えるのではなく、仕組みとして理解する。
それによって初めて、対処の精度が上がります。
私は、経営者が自分を守るうえで大切なのは、根性論ではなく構造理解だと思っています。
何が起きているか分かれば、必要以上に自分を責めずに済みます。
そして、壊れる前に手を打てるようになります。
アドレナリンは、戦うための瞬発力をつくるホルモンです
講座ではまず、アドレナリンについて扱いました。
アドレナリンは、緊急時に分泌される瞬発力のホルモンです。
心拍数を上げ、血圧を高め、体を一気に戦闘モードへ持っていきます。
危険な状況や強い緊張にさらされたときに反応するのは、この働きによるものです。
経営の現場でも、嫌な連絡が来たとき、厳しい判断を迫られたとき、過去の苦い記憶がよみがえったときに、動悸が高まることがあります。
それは気のせいではなく、実際に体が反応しているということです。
競技経験のある参加者の方からは、あの感覚か という共感の声もありました。
つまり、経営の場面で起きていることも、体としては 緊急事態 に近い反応なのです。
この理解はとても重要です。
なぜなら、自分はおかしくなったのではなく、体が正常に反応しているのだと分かるだけで、無用な自己否定が減るからです。
コルチゾールは、長期戦を支える一方で、出続けると人を削ります
次に扱ったのが、コルチゾールです。
コルチゾールは、長期のストレスに対して分泌される防衛ホルモンです。
糖や脂肪を動員し、体を緊張状態のまま維持する働きを持っています。
短期的には必要な反応です。
ですが、この状態が長く続くと、体にも心にも大きな負担がかかります。
睡眠障害
免疫力の低下
意欲の低下
集中力の低下
こうした不調は、単なる気分の問題ではなく、長引くストレス反応の結果として現れることがあります。
経営者は、責任感が強い人ほど、この状態を引きずりやすい。
休んでいても頭が止まらない。
寝ていても考えている。
体は止まっているのに、中身は戦闘状態のまま。
これでは回復が追いつきません。
だからこそ、ストレスを 我慢するもの と考えるのではなく、出続けたら危険なものとして認識する必要があります。
大切なのは、抑え込むことより予防することです
今回の講座で共有した一つ目の視点は、ストレスは 抑える よりも 予防する ことが大切だという点です。
多くの人は、しんどくなってから何とかしようとします。
ですが、ストレスは積み上がってから対処するより、積み上がる前に減らす方がはるかに有効です。
無理な予定を詰め込みすぎない。
苦手な相手との接触時間を減らす。
嫌な記憶を呼び起こす場に長くいない。
こうした調整は、甘えではなく予防です。
私は、壊れてから立て直すより、壊れないように設計する方がよほど経営的だと考えています。
会社の資金繰りと同じで、詰んでから考えるのでは遅い。
人間の体も同じです。
その場を離れることは、逃げではなく戦略です
二つ目の視点として共有したのは、無理せずその場を離れることも立派な戦略だということです。
真面目な人ほど、最後まで耐えようとします。
逃げてはいけない。
向き合わなければならない。
経営者なら踏ん張らなければならない。
そう考えがちです。
ですが、状況によっては、その場に居続けること自体が損失になります。
体も判断力も削られた状態で粘っても、良い結論は出にくい。
むしろ一度離れた方が、結果として良い判断につながることがあります。
私は、離れることは敗北ではないと考えています。
立て直すために離れる。
冷静さを取り戻すために離れる。
それは、守りの戦略です。
経営でも同じですが、勝ち続ける人は、無駄な消耗戦を避けるのが上手い。
自分を守るという意味でも、この感覚は重要です。
判断を一人で抱え込まない環境づくりが必要です
三つ目の視点として確認したのが、判断を一人で抱え込まない環境づくりの重要性です。
経営者は孤独です。
ですが、孤独と孤立は違います。
最終判断は自分で下すとしても、そこに至るまでの整理や相談まで全て一人で抱え込む必要はありません。
誰にも話せない状態が続くと、思考は煮詰まり、同じ不安を頭の中で反芻するようになります。
その結果、ストレス反応も強まりやすくなります。
だからこそ、信頼できる相手を持つこと。
整理の壁打ちができること。
自分の状態を客観視できる場を持つこと。
これらは精神論ではなく、経営の安全装置です。
私は、経営者支援とは数字や戦略だけでは足りないと考えています。
経営者本人の判断力と持続力を守ること。
そこまで含めて、伴走の価値があると思っています。
ストレスを理解すると、自分の扱い方が変わります
ストレスは避けられないものです。
経営をしていれば、責任も重圧も消えません。
ですが、仕組みを理解し、正しく扱えるようになると、ストレスはただの敵ではなくなります。
いま自分の体で何が起きているのか。
なぜ眠れないのか。
なぜ動悸がするのか。
なぜ意欲が落ちるのか。
これが分かると、自分を壊す前に対策が打てます。
今回参加された経営者の皆さまも、自分自身の体と向き合いながら、経営に活かす視点を持ち帰っていただけたように感じます。
ストレスを理解することは、自分を甘やかすことではありません。
体と判断力を守るための、極めて実務的な学びです。
経営の強さは、自分を知ることから始まります
第9回では 自分を知る ことを扱いました。
そして今回の第10回では、自分の価値観だけでなく、自分の体の反応を知ることまで踏み込みました。
経営者として長く戦うためには、外の環境を読む力だけでは足りません。
自分の内側で何が起きているのかを知り、自分を適切に扱えること。
それが、経営の持続力につながります。
経営の強さは、無理をし続けることではありません。
自分の状態を理解し、壊れない形で前に進めることです。
今回の講座もまた、永く続く経営の土台を整える大切な時間となりました。






