税理士の変更、セカンドオピニオンをお考えなら、遠藤会計。国税と税理士の知見で、経営の損失を食い止める。

敵は身内にあり。配偶者を経理担当にすると公私混同が起きやすい理由

会社のお金の問題は、外から壊されるとは限りません。
むしろ、身内だからこそ壊れやすいことがあります。

その典型が、配偶者を経理担当にするケースです。

もちろん、すべてが悪いと言いたいわけではありません。
実際、身内が支えて会社が回っている事業もあります。
ですが私は、配偶者を経理に置くことについては、かなり慎重であるべきだと考えています。

なぜなら、公私混同が起きやすいからです。

その理由は単純です。
配偶者は、どうしても事業より家庭を優先しやすい。
そして、会社のお金を家庭予算の延長のように見がちだからです。

社長にとっては事業資金でも、配偶者からすると、家の財布の延長に見えてしまう。
ここに最初の危険があります。

1. 配偶者を経理に置くと、会社のお金が家庭の財布に近づきます

会社のお金は、本来、家庭のお金とは切り分けなければいけません。
当たり前の話ですが、この当たり前が一番崩れやすいのが身内です。

配偶者が経理に入ると、毎日の支払い、入金、通帳残高、現金の流れを一番近くで見ることになります。
すると、会社のお金が 遠い資金 ではなく 身近なお金 に変わっていきます。

もちろん、最初から不正をしようと思っているわけではないことが多いです。
むしろ、家計を支えよう、会社を助けようという善意から始まることもあります。

ですが、善意だから安全とは限りません。
善意のまま、境目が曖昧になる。
これが一番厄介です。

たとえば、

・一時的に立て替えたつもりで使う
・家の支払いと会社の支払いの線がぼやける
・今月は忙しいから後で整理しようとする
・細かい説明を省略しても身内だから大丈夫だと思う

こうしたことが少しずつ積み重なると、会社のお金の流れは簡単に濁ります。

2. 社長は、身内に対して確認をしなくなります

しかも、多くの社長はそこで甘えます。

自分は数字に疎いから。
経理はよく分からないから。
妻に任せているから大丈夫。
こうやって丸投げする。

なぜ丸投げするのか。
配偶者は裏切らないと思っているからです。
ここが危ない。

外部の人間なら疑うことも、身内には疑わない。
確認もしない。
チェックもしない。
結果として、会社のお金がブラックボックスになります。

社長にとって本当に危険なのは、悪意があるかどうかではありません。
見えていないことです。

誰が何に使ったのか。
なぜその支出が必要だったのか。
残高が減っている理由は何か。
これが見えなくなった時点で、会社のお金はもう守れません。

3. 身内のブラックボックス化は、最後に全部つながります

そして、思い込みが外れたときの損失は大きい。
横領。
資金繰り悪化。
足りない資金を埋めるための過度な節税。
さらに、数字をよく見せるための粉飾。
税務調査。
金融機関からの支援打ち切り。

こうしたことは、別々に起きるのではありません。
つながって起きます。

会社のお金の流れが曖昧になると、最後は全部つながるのです。

最初は、ちょっとした曖昧さです。
少しの立替。
少しの記帳漏れ。
少しの処理の先送り。
でも、そこに身内の遠慮と確認不足が重なると、修正が効かなくなります。

気づいたときには、

・残高が思ったより少ない
・なぜ減ったのか説明できない
・帳簿と実態が合わない
・借入でつないでいる
・社長自身が正しい数字をつかめていない

こういう状態になりやすいのです。

4. 根っこにあるのは、配偶者が経営の素人であることです

では、なぜここまで危ないのか。
私は根っこにあるのは、配偶者が素人であることだと思っています。

経理の素人。
お金の管理の素人。
経営の素人。
その素人が、配偶者という立場で会社のお金に触る。
しかも実質的には会社のナンバー2になりやすい。
お金に関してはトップに立ってしまう。
これは相当危ない構図です。

本来、経理とは単なる事務ではありません。
お金の流れを見て、異常を察知し、線を引き、記録し、守る役割です。

ところが、配偶者が素人のままそこに入ると、会社のお金をお小遣いのように見てしまうことがあります。
悪気がないことも多い。
でも、悪気がないから安全、ではありません。
むしろ、悪気がないまま崩れる方が厄介です。

経理に必要なのは、優しさではありません。
線を引く力です。
記録する力です。
公私を分ける力です。
ここが弱いと、会社のお金はじわじわ漏れます。

5. いくら稼いでも残らない会社は、守る仕組みが壊れています

社長にとって一番まずいのは何か。
いくら稼いでも、お金が流れていく状態になることです。

売上はある。
利益も出ているはず。
でもなぜか残らない。
通帳残高が増えない。
月末になると苦しい。

この状態が続くとき、社長は 稼ぐ力が足りない のではなく、守る仕組みが壊れていることが多いのです。

そしてその壊れ方は、外からは見えにくい。
なぜなら、身内だからです。

家の中のことだから。
夫婦のことだから。
他人が口を出しにくい。
社長自身も見て見ぬふりをしやすい。
ここに、身内特有の怖さがあります。

外部の経理担当なら、問題があれば距離を取れる。
配置転換もできる。
契約を切ることもできる。
ですが、配偶者だとそうはいきません。

会社の問題が、夫婦の問題に変わる。
逆に、夫婦の遠慮が会社の問題を放置させる。
この絡み方が危ないのです。

6. 配偶者だから経理でよい、は安直です

だから私は、まず社長に言いたい。
配偶者だから経理でよい、と安直に決めないことです。

そして、配偶者は数字が得意だと勝手に思い込まないことです。

優しい。
まじめ。
家を守ってくれている。
それと、会社のお金を扱えることは別問題です。

家庭を守れる人が、事業資金を守れるとは限りません。
この違いを直視しないと、会社と家庭の両方が崩れます。

社長の中には、身内なら人件費も抑えられるし、安心だし、外に任せるより楽だ、と考える方もいます。
ですが、それは短期的な楽です。
長期では、確認不足、統制不足、感情のもつれという別の重いコストを生みます。

7. 配偶者を経理に入れるなら、かなり厳しい条件が必要です

では、配偶者を経理に入れてもうまくいく条件はあるのか。
私は、かなり厳しい条件が必要だと思っています。

① 予算権と執行権を分けること

まず、予算権と執行権を渡さないこと。
つまり、お金をどう使うか決める権限と、実際に使う権限を一人に持たせないことです。

使うことを決める人。
実際に支払う人。
記録する人。
確認する人。
この役割は、できるだけ分けるべきです。

一人が全部持つと、不正が起きるから危ないのではありません。
間違いも、甘えも、見逃しも、一人で通ってしまうから危ないのです。

② 信頼しても、見えるようにすること

さらに、配偶者を信頼しないこと。
ここはあえて強く言います。
夫婦仲の話ではありません。
内部統制の話です。

信頼するから見ない、ではなく、信頼していても見えるようにする。
それが会社を守るやり方です。

たとえば、

・通帳残高を社長が直接確認する
・毎月の試算表を社長自身が見る
・現金の流れを第三者にも分かる形で残す
・外部の税理士や専門家が定期的に見る
・支払いの承認手続きを明確にする

こうした仕組みが必要です。

③ 夫婦関係と会社の役割を混ぜないこと

夫婦の会話の延長で会社のお金を決める。
これも危険です。

家庭の感情と、会社の数字は分ける。
この線引きができないなら、配偶者を経理に入れるべきではありません。

8. 会社は家庭ではありません

社長の中には、身内を疑うなんてできない、と感じる方もいるでしょう。
ですが、会社は家庭ではありません。

家庭の甘えを会社に持ち込むと、お金は漏れます。
しかも、漏れ始めたときには、たいてい遅い。

通帳残高が減り、
資金繰りが悪化し、
借入に頼り、
数字をごまかしたくなる。

そこまでいってから気づいても、立て直しは簡単ではありません。

だからこそ、最初の判断が大事です。

配偶者に任せるかどうか。
任せるとしても、どこまでか。
決めるのは社長です。

身内だから安心ではない。
むしろ、身内だからこそ危ない。
ここを直視できるかどうかで、会社のお金の守り方は大きく変わります。

9. 結論。身内への甘えが会社を潰します

結論はシンプルです。

身内への甘えが会社を潰す。

会社のお金を守りたいなら、身内を善意で見るのではなく、仕組みで見ることです。
夫婦関係と経営管理を分ける。
家庭の信頼と会社の統制を分ける。
この線引きができて初めて、お金の損失は止まります。

10. まとめ

配偶者を経理担当にすると、公私混同が起きやすくなります。
理由は、会社のお金が家庭の財布の延長に見えやすいからです。
さらに、社長が 身内だから大丈夫 と確認をやめることで、問題は見えにくく、深刻になります。

危ないのは、悪意のある横領だけではありません。
悪気のない曖昧さ、先送り、確認不足、線引きの甘さです。
こうしたものが積み重なると、会社のお金の流れは簡単に壊れます。

だからこそ、

・配偶者だから経理でよいと安易に決めない
・予算権と執行権を分ける
・信頼していても見えるようにする
・夫婦関係と経営管理を分ける

このあたりを徹底すべきです。

会社を守るのは、善意ではありません。
仕組みです。
身内だからこそ、仕組みで守る。
この発想が必要です。

11. 会社のお金の流れが見えなくなっている社長へ

売上はあるのに残高が増えない。
利益が出ているはずなのに、月末が苦しい。
こういう会社は、稼ぐ力より先に、守る仕組みを疑った方がいいです。

特に、身内に経理を任せていて、社長自身が数字を見ていないなら要注意です。
問題は、配偶者であることそのものではなく、確認しなくてもよい空気ができることです。

会社のお金を守るには、信頼より先に、見える仕組みが必要です。

福島県郡山市で、税理士のセカンドオピニオンを中心に活動。 国税18年、税理士8年の経験をもとに、経営の損失を防ぐため、お金、人材、時間、機会、家族、未来の6つから企業を支援。

関連記事

目次