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社長の仕事は節税か、それともお金を残すことか

会社に利益が出てくると、必ず聞こえてくる話があります。

節税した方がいい。
保険に入った方がいい。
今のうちに経費を使った方がいい。
税金を払うくらいなら、何か買った方がいい。

社長であれば、一度はこうした話を聞いたことがあると思います。
ですが、私は最初にこう問いかけたいのです。

社長の仕事は、節税ですか。
それとも、お金を残すことですか。

ここを間違えると、会社は静かに弱っていきます。

節税という言葉は、何となく賢そうに聞こえます。
税金が減る。
会社に得がある。
そう感じやすいからです。

ですが実際には、節税が投資ではなく、ただの浪費になることがあります。
お金を残すどころか、逆に失う。
資金繰りが苦しくなる。
使わないものを、節税のためだけに買う。
その結果、お金が減って、今度は利息を払ってお金を借りる。

これは、本末転倒です。
何のために経営しているのか分からなくなります。

税金を減らしたい気持ちは分かります。
ですが、税金を減らすために現金を失い、経営の自由度まで落とすなら、それは節税ではありません。
お金の損失です。

1. 節税が浪費になるときがあります

節税は、やればやるほど良いものではありません。
会社に本当に必要な支出であればよいのです。
しかし、節税を目的にすると、判断が逆転します。

本来は、会社を残すために必要か。
利益を生むか。
資金繰りを守るか。
そこから考えるべきです。

ところが、節税が先に来ると、税金が減るかどうかだけで判断してしまう。
すると、使わないものを買う。
今いらない契約を結ぶ。
後で重荷になる固定費を抱える。
こうしたことが起きます。

たとえば、100を使って30の税金を減らしたとしても、手元からは70出ていきます。
この当たり前の計算が、節税という言葉の前で曖昧になることがあります。

節税した。
だから正しい。
そうではありません。

大事なのは、節税した後に現金が残るかどうかです。
社長が守るべきなのは、節税の達成感ではなく、会社の残高です。

2. 社長が危ない節税に走る理由は、周りのすすめと知識不足です

社長が危ない節税に走る理由は、そこまで複雑ではありません。
大きくは二つです。

一つは、周りのすすめ。
もう一つは、知識不足です。

今はこういう保険がいいですよ。
税金がもったいないですね。
今のうちに経費を使った方が得ですよ。
こうした提案は、社長のためを思っているように聞こえます。

ですが、言われる側の社長には、税務や資金繰りの知識が十分でないことも多い。
だから、そういうものかと思ってしまう。
節税になるなら、やった方がいいのだろうと考えてしまう。

ここに落とし穴があります。

知らないところに、売るプロが来る。
そして、社長はその場で判断させられる。
危ないのは、むしろ当然です。

経営者は、事業のプロではあっても、保険や税務商品の営業トークのプロではありません。
だからこそ、良さそうに見えるものほど、一度立ち止まらなければいけません。

3. 典型例は保険です

節税の話で、私がまず危ないと思う典型例は保険です。
もちろん、保険そのものを否定しているわけではありません。
必要な保険はあります。
会社を守るために必要な備えもあります。

問題は、保険の必要性ではなく、節税ありきで保険に入ることです。

しかも、保険を勧めてくる人は、税理士ではありません。
税務のプロではない。
保険のプロだと言うかもしれませんが、実際には保険を製造する人でもなければ、事故のときに最後まで寄り添う人でもない。
多くは営業マンです。
つまり、売る人です。

売る人の理屈はシンプルです。
売れればいい。
その後、事故が起きたときに、売った本人が責任を持って支えてくれるとは限りません。
実際に対応するのは別の部署。
売った本人は、次の保険を売りに行っていることもある。

これが現実です。

だから、節税になるから入りましょう、という順番で保険を考えるのは危険です。
まず見るべきは、会社にとって本当に必要かどうかです。

4. 最初に考えるべきは、手段と目的です

保険に限らず、節税の提案を受けたときに、社長が最初に確認すべきことは一つです。
手段と目的を分けることです。

何のために、それをやるのか。
本当に必要な備えなのか。
社長に万が一があったとき、会社が傾かないために必要なのか。
費用対効果は合っているのか。
この支出は、会社の未来にとって意味があるのか。

そのうえで、本当に保険の備えが必要なら入ればいい。
その結果として節税になるなら、それでいいのです。

順番はそこです。

ところが、順番が逆になると危険です。

節税したい。
だから保険に入る。
この発想になると、会社にとって必要かどうかが後回しになります。

そもそも保険とは、会社が傾かないために入るものです。
潤沢なキャッシュがあり、後継者もいて、社長個人も家族を守れるだけの財を持っているなら、本来はそこまで必要ない場合もあります。
家族が保険に頼らずとも生きていける力があれば、無理に入る必要はない。

ここを見ないで、節税になるから入りましょうでは、話が浅すぎます。

5. 危険信号は、保険会社の言いなりになることです

社長が節税で失敗するときの危険信号は明確です。
保険会社の言いなりになることです。

なぜ言いなりになるのか。
相手が売るプロだからです。
話し方もうまい。
数字の見せ方もうまい。
不安の煽り方もうまい。

しかも厄介なのは、ときに税理士まで抱き込んでいることです。
保険を擁護する税理士の中には、保険会社からわずかにでもお金をもらっている人がいる。
知らないのは社長だけ、という構図すらあります。

社長は、自分の会社のために提案されていると思っている。
でも、実際には売る側の都合が先に立っていることがある。
ここを知らないまま進めば、守るべき会社のお金は簡単に外へ流れていきます。

社長は、良い話ばかり聞かされたときほど疑うべきです。
節税できます。
保障もあります。
資産にもなります。
こうした言葉が並ぶほど、いったん冷静になる必要があります。

6. 会社を守る判断基準は、信用できるパートナーかどうかです

では、社長は何を基準に判断すればいいのか。
私は、信用できる人間をパートナーにすることだと思います。

誰が信用できるのか。
それは、会社の存続を第一に考える人です。
商品を売ることではなく、会社を残すことを優先する人です。
節税できますよと片側だけ話す人ではなく、メリットとデメリットの両方を説明できる人です。

たとえば保険なら、税理士に聞いてみることです。
保険のメリットは何か。
デメリットは何か。
その両方を説明できるか。
そこを見た方がいい。

良い話ばかりをする人は危ない。
悪い話までできる人の方が、会社を守る側に立っています。

本当に信用できる人は、社長に気持ちよく決めさせる人ではありません。
社長が後で困らないように、嫌な話も先にする人です。
その違いは大きいです。

7. 節税より先に、残高を守るべきです

節税は、悪ではありません。
必要な節税もあります。
やるべき節税もあります。

ですが、節税は目的ではありません。
目的は、会社にお金を残すことです。
会社を残すことです。
資金繰りを守ることです。
社長の判断の自由を守ることです。

税金を減らしても、現金が減ったら意味がない。
節税したつもりで、固定費や借入の重荷を増やしたら意味がない。
社長が守るべきは、節税の数字ではなく、会社の残高です。

会社にお金が残っていれば、選べます。
投資もできる。
採用もできる。
苦しい時に耐えられる。
社長の判断の自由度も上がります。

逆に、お金がなければ、全部が苦しくなります。
良い提案も受けられない。
必要な投資もできない。
金融機関に頭を下げるしかなくなる。
だからこそ、残高を守ることの方が先なのです。

8. まとめ

利益が出ると、節税した方がいい、保険に入った方がいい、経費を使った方がいい、という話が増えます。
ですが、社長が最初に考えるべきことは、節税そのものではありません。

社長の仕事は、節税ですか。
それとも、お金を残すことですか。

この問いに正面から答えられるかどうかで、会社の未来はかなり変わります。

節税は手段です。
目的ではありません。
会社に本当に必要な支出であり、その結果として節税になる。
この順番ならよいのです。

ですが、節税したいからお金を使う。
節税したいから保険に入る。
この順番になると危険です。

社長が守るべきは、節税の達成感ではありません。
会社の残高です。
会社の自由度です。
会社が明日も選べる状態を残すことです。

その順番を間違えないこと。
それが、お金の損失を食い止める第一歩です。

9. 節税の前に、残高を守る判断をしたい社長へ

節税の提案は、うまく聞こえます。
ですが、良い話ほど、何のためにやるのかを分けて考えた方がいいです。

本当に必要な支出なのか。
会社を守る備えなのか。
それとも、税金を払いたくない気持ちに引っ張られているだけなのか。

この整理ができるだけで、社長の判断はかなり変わります。
会社を弱らせる節税ではなく、会社にお金を残す判断を優先してください。

福島県郡山市で、税理士のセカンドオピニオンを中心に活動。 国税18年、税理士8年の経験をもとに、経営の損失を防ぐため、お金、人材、時間、機会、家族、未来の6つから企業を支援。

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