節税より残高。保険でお金の損失を止められていますか

利益が出てくると、必ず出てくる話があります。
保険に入りませんか。
節税になりますよ。
万が一の備えにもなります。
一見、もっともらしく聞こえます。
ですが、私は社長にまずこう問いかけたいのです。
節税のために、現金を失っていませんか。
会社を守るはずの判断が、逆に会社の資金繰りを悪くしている。
そんなことは珍しくありません。
1. 保険は、夢のある商品ではありません
保険を、どこか宝くじのようなものと勘違いしている社長がいます。
払っておけば、いつか大きく返ってくる。
万が一のときには、まとまったお金が入る。
節税にもなる。
そう考えると、何となく得な気がします。
ですが、保険は将来リスクヘッジの手段の一つでしかありません。
それ以上でも、それ以下でもない。
本来の保険は、会社や家族が大きく傾かないための備えです。
不足を埋めるための道具です。
利益を生む主役でもなければ、経営を好転させる魔法でもありません。
ここを履き違えると、保険が会社を守る道具ではなく、会社の現金を減らす装置になります。
2. 保険がいらない会社もあります
保険が本当に必要かどうかは、会社の状態によります。
不要な会社もあります。
たとえば、
・キャッシュが潤沢にある
・社員や後継者の育成が進んでいる
・家族が自力で生きていける
・将来への対策がすでにできている
こういう会社なら、保険の優先順位は下がります。
なぜなら、万が一への備えが、すでに別の形でできているからです。
逆に、
・キャッシュに余裕がない
・社員や後継者が育っていない
・家族が社長の収入に強く依存している
・将来への備えが弱い
こういう会社ほど、保険の必要性は高く見えます。
ただし、ここに大きな落とし穴があります。
3. 苦しい会社ほど、保険でさらに苦しくなることがあります
本来、資金繰りに余裕がない会社ほど慎重であるべきです。
ところが実際には、そういう会社ほど保険に走りやすい。
なぜか。
短絡思考です。
業績が良くならない。
お金も増えない。
だから、手っ取り早く節税して、得した気分になろうとする。
でも、それで本当に得をしているのでしょうか。
保険料は毎年確実に出ていきます。
資金繰りは目の前で細っていきます。
そして、会社の残高は減ります。
万が一に備えるつもりが、ほとんど毎日続く日常の資金繰りを悪くしている。
これでは順番が逆です。
4. 節税は、所詮三割引前後です
ここは冷静に数字で見た方がいいです。
法人税の基本税率は23.2%で、中小法人等の所得のうち年800万円以下の部分には軽減税率の特例があります。2025年4月1日以後開始事業年度からは、一定の場合にその軽減税率が15%または17%となり、さらに2026年4月1日以後開始事業年度からは防衛特別法人税も導入されます。つまり、節税で戻る金額には限界があります。
要するに、100万円使ったら、税金が全部なくなるわけではありません。
税率分だけ安くなるにすぎない。
残りは自分のお金で払っているのです。
100万円の支出を、税効果込みで少し安く買っただけ。
それ以上の価値を生まないなら、ただの銭失いです。
節税できた、ではありません。
お金を使った、です。
ここを取り違える社長が本当に多い。
税金が減ることと、会社にお金が残ることは、同じではありません。
5. 問うべきは、この保険は資金繰りにどう影響するかです
保険に入る前に、社長が必ず考えるべき問いがあります。
それは、保険に入るべきかどうかではありません。
この保険は、会社の資金繰りにどう影響を与えるか。
ここです。
毎年いくら出ていくのか。
それを払い続けても、運転資金は薄くならないのか。
他の投資機会を潰さないか。
借入に頼る体質を強めないか。
社長が守るべきは、節税の見かけの数字ではありません。
残高です。
使える現金です。
経営の自由度です。
保険を検討するなら、節税効果の前に、まず残高への影響を見なければいけません。
6. 保険料を払うより、先に使うべき先があるかもしれません
もし、その保険料を会社に残したらどうなるか。
この発想も大事です。
人材教育に使える。
新しい挑戦に回せる。
設備更新ができる。
それがなければ、資金を厚くできる。
残高が厚ければ、金融機関も貸しやすい。
貸したいと思える会社になります。
つまり、保険に払って見えない安心を買うより、手元資金を厚くして見える安心を作る方が強い場面があるのです。
社長の判断の自由度は、最後は現金が決めます。
節税の効果ではありません。
7. 保険の営業は、会社の存続を第一に考えているとは限りません
ここでもう一つ厄介なのは、保険を勧める相手です。
社長は、専門家に勧められていると思っている。
でも実際には、売る側は売るプロです。
保険会社の営業は、税理士ではありません。
税務のプロではない。
本質的には営業マンです。
売れればいい、という論理が先に立ちやすい。
社長から見れば、親切に見える。
でもその提案が、本当に会社の存続を第一に考えたものかは別問題です。
だから、保険の話を聞いたら、メリットだけではなくデメリットまで説明できる相手かどうかを見なければいけません。
良い話ばかりする人は危ない。
悪い話までできる人の方が、会社を守る側に立っています。
8. 社長の仕事は、節税ではありません
社長の仕事は何か。
節税でしょうか。
違います。
会社にお金を残すことです。
もちろん、必要な節税はあります。
やるべき節税もあります。
ですが、節税は手段です。
目的ではありません。
目的は、
・会社を残すこと
・資金繰りを守ること
・挑戦できる余力を残すこと
・社員を守ること
・家族を守ること
です。
そのために必要なら保険に入ればいい。
でも、節税になるから入る、では危ない。
順番を間違えると、会社は静かに弱ります。
9. 結論。節税より残高です
私は、社長にはこう考えてほしいのです。
保険に入ると税金はいくら減るか。
ではなく、
この保険で、会社の残高はどうなるか。
節税より残高。
これが原則です。
税金を減らしても、現金が減ったら意味がない。
万が一に備えたつもりで、日常の資金繰りを悪くしたら意味がない。
社長が守るべきは、保険の提案ではなく、会社のお金です。
節税のために現金を失っていないか。
この問いを持てるかどうかで、会社の未来はかなり変わります。
10. まとめ
利益が出ると、保険に入りませんか、節税になりますよ、という話が増えます。
ですが、社長が最初に考えるべきなのは、節税効果ではありません。
・この保険は本当に必要か
・資金繰りを悪くしないか
・他に優先すべき使い道はないか
・会社の残高は厚くなるのか薄くなるのか
ここです。
社長の仕事は、節税のテクニックを追いかけることではありません。
会社にお金を残し、経営の自由度を守ることです。
節税は手段。
残高は土台。
この順番を間違えないことが、お金の損失を食い止める第一歩です。










