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人手不足のクリニックほど、勤務医師と一線を引くべき理由

人手不足のクリニックほど、勤務医師を特別扱いしやすくなります。

来てくれるだけありがたい。
辞められたら困る。
医師免許、歯科医師免許は希少だから、多少は仕方ない。

こうした空気は、現場では珍しくありません。
ですが私は、むしろ人手不足のクリニックこそ、勤務医師と一線を引いて付き合うべきだと考えています。

理由は単純です。
経営の素人に、クリニック経営を壊されるからです。

勤務医師は、医療の専門家です。
ここは間違いありません。
ですが、医療の専門家であることと、経営の専門家であることは別です。

医療分野には強くても、世情や人の使い方、お金の流れ、資金繰り、組織運営には疎いことがある。
それにもかかわらず、人手不足と資格の希少性を背景に、勤務医師の発言が院内で特別な重みを持ち始める。
これが危ないのです。

1. 最初に見るべきは、給与相場ではなく粗利です

最初に出やすいのは、給与の話です。
勤務医師の高額給与は、今の流れとしてたしかにあります。
ですが、そこで本来問うべきなのは、世間相場ではありません。
粗利ベースで本当に稼げるのか、です。

その人に払う給与は、その人が生み出す粗利に見合っているのか。
ここを見ずに、人がいないから、高いけれど仕方ないで進めると、後で必ずひずみが出ます。

しかも問題は、単に人件費が高くなることではありません。
もっと深刻なのは、勤務医師が一番偉い空気ができることです。
この空気ができた瞬間、お金の損失は静かに始まります。

2. 勤務医師が一番偉い空気が、現場の秩序を壊します

なぜなら、勤務医師が一番偉いとなると、現場の指揮系統が壊れるからです。

本来、クリニックには役割分担が必要です。
院長が経営と最終判断を担う。
現場の運営にはチーフがいる。
看護師なら看護師、衛生士なら衛生士、それぞれの持ち場で秩序がある。
この線があるから、組織は回ります。

ところが、勤務医師が特別扱いされると、その線が崩れます。
医療の指導をするだけならよいのです。
そこは大いにやってよい。
しかし、現場ルールの変更まで好き放題に口を出し、それを院長が止めず、指導もしない。
こうなると、チーフの立場はなくなります。

スタッフは誰の指示を聞けばいいのか分からなくなる。
現場は混乱し、不公平感が広がります。

3. 本当に辞めるのは、勤務医師以外の支える人たちです

その先に何が起きるか。
他のスタッフの離職です。
そして利益低下です。

院長は、勤務医師が辞めたら困ると思って特別扱いする。
しかし、その結果として、他のスタッフが辞める。
現場を支えてきた人が疲弊する。
まともな人ほど、ばかばかしくなって辞めていく。

そうなると、結局クリニック全体の生産性が落ちます。
残業も増える。
教育負担も増える。
院長の手間も増える。
利益は下がる。

人手不足を勤務医師で解決しようとした結果、かえって人の問題が大きくなるのです。

4. 一線を引くとは、冷たくすることではありません

ここで大事なのは、一線を引くとは、冷たくすることではないということです。
特別扱いしない、ということです。

勤務医師は大事な戦力です。
ですが、万能役ではありません。
マネジャーでもなければ、経営者でもありません。
あくまでワーカーです。
この役割分担を崩さないことが大切です。

理想のクリニックは、勤務医師に自由を与えすぎる場所ではありません。
役割が明確な場所です。

勤務医師は医療に集中する。
現場ルールの運営は、衛生士チーフや看護師チーフが担う。
院長は、その全体を見て最終判断をする。

この線引きがあるから、現場は安定します。
誰がどこまで決めるのかが明確だから、スタッフも納得しやすい。
空気ではなく、ルールで回るようになります。

5. 院長が絶対にやってはいけないこと

逆に、院長が絶対にやってはいけないのは、勤務医師に好き放題させて、指導しないことです。

医療の技術面で意見を言うのは構いません。
ですが、現場ルールまで勝手に変えさせてはいけない。
そこを曖昧にすると、院長が自分で自分の組織を壊すことになります。

人手不足になると、人で解決しようとしがちです。
誰かを入れれば何とかなる。
強い人を一人入れれば回る。
そう考えたくなる気持ちは分かります。

ですが、そこで勤務医師を特別扱いし始めると、問題の根はさらに深くなります。

6. 人で解決しようとしないことが、むしろ正解です

大事なのは、人で解決しようとしないことです。
人を入れれば解決するわけではありません。

役割分担を整える。
指揮系統を守る。
誰が何を決めるかを明確にする。
そのうえで、勤務医師を戦力として活かす。
順番はそこです。

勤務ドクターは万能役ではありません。
ここを院長が忘れた瞬間、クリニックのお金は静かに漏れ始めます。

人手不足のときほど、強い一人に頼りたくなります。
ですが、頼ることと、特別扱いすることは違います。

7. 守るべきは給与相場ではなく、現場の指揮系統です

お金の損失を食い止めたいなら、まず守るべきは給与相場ではありません。
現場の指揮系統です。
そして、勤務医師はあくまでワーカーであり、経営や現場運営の最終責任者ではないという線引きです。

この一線を守れる院長だけが、他のスタッフを守り、利益を守り、クリニックの秩序を守れます。

8. まとめ

人手不足のクリニックほど、勤務医師を特別扱いしやすくなります。
ですが、その特別扱いが現場の指揮系統を壊し、他のスタッフの離職を招き、結果として利益を落とすことがあります。

勤務医師は大事な戦力です。
ただし、経営者でも、現場運営の最終責任者でもありません。
医療に集中してもらう。
現場運営はチーフが担う。
院長が最終判断をする。
この線引きが必要です。

人手不足だからこそ、強い一人に依存しない。
役割分担を明確にし、空気ではなくルールで回す。
それが、お金の損失を食い止めるための現実的な打ち手です。

9. クリニックの人の問題を整理したい院長へ

勤務医師との距離感が曖昧になると、表面上は回っていても、現場の不満や疲弊は静かに蓄積します。
問題は、勤務医師そのものではなく、院長がどこまで任せ、どこで線を引くかです。

誰が何を決めるのか。
現場ルールを誰が守らせるのか。
その整理ができるだけでも、クリニックの空気と利益はかなり変わります。

福島県郡山市で、税理士のセカンドオピニオンを中心に活動。 国税18年、税理士8年の経験をもとに、経営の損失を防ぐため、お金、人材、時間、機会、家族、未来の6つから企業を支援。

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